山本文緒さんの「自転しながら公転する」を読んで思う

今週のお題「読書の秋」

 

信じられないことについ先日亡くなられてしまった、山本文緒さんの「自転しながら公転する」を読んだ際に勇気づけられたことをこの機会に認めておきたい。

筋の要諦は、本の帯にあるように ”東京で働いていた32歳の都は、親の看病のために実家に戻り、近所のモールで働き始めるが‥‥‥。恋愛、家族の世話、そのうえ仕事もがんばるなんて、そんなの無理!” と、もがき頑張る姿。そして2042年の未来の場面で、成人した娘の母としての都の述懐は「別にそんなに幸せになろうとしなくていいのよ。幸せにならなきゃって思い詰めると、ちょっとの不幸が許せなくなる。少しくらい不幸でいい。思い通りにならないものよ」と。そんな言葉とこの物語は、私のこの先にある何となくの不安をとても癒してくれた。

私の状況を書き出すに、一家を支えるためのお給料が低下、子供達の進路への心配、賃貸住宅に一生住めるのかそれとも今更家を買うのかそんな金はあるのか?、老後資金は足りるのか?、そして遠方に住む高齢の親のこと…。

でもこうして文字お越ししてみると、何か第三者的立場で自分の状況が見える気がして、小説の主人公の都の切実さに比べるとまだまだ私には余裕があるような気がしてくる。確かにワーストケースを想定すると身動き取れなくなりそうだけども、現実は意外と想像してなかった良いことも起こるわけで自分はまだまだ追い詰められているうちに入らないのでは、と心の声が響いた。

都の行動力のように私ももっと心に思うことをやってみて、そういうことが何らかこの先の可能性を広げてくれるように思えてくる。そんな小説でした。

山本文緒先生、ありがとうございました。

 

2021年10月24日

 

好きな社会情勢10選⁈ 日本傷だらけだけど

はてなブログ10周年特別お題「好きな◯◯10選

 

今の日本を思う時、厳しいことばかりが思い起こされてしまう。

少子高齢化、❷巨額の財政赤字、❸数十年に一度と言われる気象異常が毎年起こる、❹労働生産性の低さ(OECD加盟国の下位を低迷)、❺他の先進国は順調に上がる賃金が日本ではちっとも上がらない、❻非正規労働者を多数生み出してしまった社会と全体としても労働者低賃金ゆえ、家庭を持つことを躊躇う環境、❼離婚率の上昇、ひとり親家庭の貧困につながっていること。

このように社会経済情勢を俯瞰するにつけ、日本は崖っぷちではないかと思ってしまう。

 

だけど今を憂うということは、日本に勢いがあった時代に生きるならばもっといい思いをできていたのか考えてみる。

かつて日本が隆盛だった頃と言えば、電子機器を中心に日本製品が世界を席巻しジャパンアズナンバーワンと言われていた今から30年余り前、所謂バブルの頃がそうだろう。

その時の生活といえば、

スマホは勿論のこと携帯電話も存在せず連絡は固定電話・公衆電話、FAX、手紙の時代だった。世の中の情勢を聞くのはTVと新聞からでSNSのような個人で世の中に発信する術はない。会社員は24時間働けますかと言われて終電近くまでの残業当たり前の時代、家庭優先しますなんて言った日には出世を諦めた変わり者と見られる。女性社員は職場の花と言われ(まともな戦力に見られていない)おやじ社員からのセクハラにもあう。職場の事務所は煙草の煙でいつもモクモクの常時受動喫煙状態。また当時は配偶者が不倫しようがDVがあろうが世間的に離婚に踏み切りにくかったし(そのくらい我慢し ろと自他ともに認識させられる)、また親を高齢者施設に預けるのは世間体が悪かった(親の面倒も見ないのかという目で見られる)

等々。こんな時代がお好みか? そうじゃないよね。

 

バブルの頃と比べて今の人々は、

スマホSNSでリアルタイムで世の中とつながる、❾仕事三昧よりも生き甲斐追求への周りの理解は向上しただろう(賃金は別として‥)、❿女性への世間体的見られ方の改善。例えばDV夫との離婚で自分が責められることが減ったであろうことや昔の女性の三従(結婚前は父に、結婚後は夫に、夫の死後は子に従え)の当然視が無くなったこと。

10選を超えたので番外だけど、●駅のトイレが綺麗になったし高速道路のSA・PAでは超絶綺麗なトイレもある(インバウンドの観光需要と関係しているのかな)。

 

結論

日本は今傷だらけだけど、過去の隆盛時を私は生きたいとは思わない。

今を生きたいよ!! 様々な困難に対峙しながら!

 

2021年10月17日

みんなよく平気だな、ネット社会

はてなインターネット文学賞「わたしとインターネット」

 
あなたが自然災害の防災グッズを取り揃える派であるなら、デジタル災害の防災も考えておくことが危険厨としての嗜みであろう。本稿ではあなたに降りかからんとするデジタル災害について2例を紹介したい。1項目はありきたりかも知れないが個人情報流出リスクの話、2項目は世の中のデジタルデータが一瞬にしてグチャグチャになる話。危険厨なら備えるべきを語りたい。
 
1.勝手に被害クラウド
日々個人情報は漏れていく。
有名な例では2014年大手通信教育会社から3500万人もの顧客情報が漏洩した。データ管理を担っていたグループ会社の業務委託先担当がアクセス権を悪用しデータを持ち出したとのこと。虎の子のはずの大規模顧客データの管理が実際の現場では委託に頼る体制でかつ統括責任者不明確と、現代ありがちな日本の会社の縮図のような状況だったようだ。
これほど大規模でなくても毎日のようにどこかの会社から個人情報流出は起こっている。地方自治体からもコロナ感染者の個人情報が次々に漏れていっており、全くもって他山の石になるわけでもなく社会の体質のようだ。
あと、これも2014年だったがクラウドからの海外著名人プライベート写真大量ハッキング事件があった。恋人とだけ共有するような写真を多くの人がクラウドに保存していることにただただ驚く。そんなこんなあろうともお構いなしに世の中はクラウド・バイ・デフォルトの流れなんだそうだ。
このような現代社会の実情からして、わたしたちの氏名住所の流出はどんなに注意しても例えば役所がグダグダだったら防ぎようがない。もう氏名住所程度は仕方がないとして、一方で絶対に他人に見られたくない画像とかネット銀行のID/パスワードなんかをクラウドに置くなんて危な過ぎると思う。さらにはあまり複雑でないパスワード設定をしがちも重なる。思うのだが、もう流出させたサイト運営を責めるよりも(そうは言っても責めるが)あなた自身が防衛できることをきっちり防衛していく姿勢が重要に違いない。
 
2.太陽フレアや電磁パルス攻撃
デジタル情報は1ビットあたり1か0かで記憶されてるわけだが、その実体は構成原子のスピンの並び(磁気ディスク)だったり微小電荷が溜まったコンデンサ(半導体メモリ)であったりする。極々小さな確率だが1ビットの情報を1→0または0→1に変えるソフトエラーという現象がある。これが起こる主な原因は、物質に極微量含んでいる放射性元素からの α線のせいだったり、宇宙から降り注ぐ宇宙線及びそれが空気と素粒子反応を起こしてできた二次粒子線のせいだとされる。家庭用PCでソフトエラーがまれに起こったとしても、ソフトエラーが起こったのか他の関連機器の誤動作なのか良くわからず終わってしまうのが実態のように思う。
ところが企業の立場ではそうはいかない。金融機関の顧客預金情報がエラーで失われたりしたら、仕方がないで済む話ではない。金融機関では2重3重のバックアップがなされており、1セットが故障・誤動作しても別のセットがリカバリーできるようになっている。普通ではこれら全部が同時にいかれてしまうことはありえないのだけど、もしシステムの想定を遥かに越えて地球規模で超大量に粒子線を浴びるようなことが起こったならバックアップも含めてデータが損傷するかも知れない。例えば千年に1回起こるかも。何しろデジタル社会・ネット社会はこの数十年ほどで発展したものであるから(祝はてな20周年!)、この期間無事だったからといって、この先安泰な保証などないと思う。
超大量の粒子線を浴びる原因候補としては太陽フレアがある。太陽活動の揺らぎに関して先々までの想定は難しいだろうからどんなレベルのことがまれに起こるか見通せない。あと人工的な方法(攻撃)としては高高度で核爆発を起こすことで発生する電磁パルス攻撃というのが軍事的にはありうる(いずれもネット検索すれば出てくるので解説はそちらに委ねる)。これらのことがもし起こると多分金融機関のデータが混乱する恐れだけではなく、そもそも電気系統のインフラがやられてしまうだろう。非常に広範囲に被害が起きれば復旧は困難を極める。そして個人の預金記録が追えなくなって復帰目途が無いとなるかも知れない。
自分だけ良ければ的考えだけども、個人としては自分の預金を金融機関のデータ記録だけに頼らずに”通帳”を保持し続けることがこのような場合に到って何とか自己の保有額を主張する材料になりうるかと思う。今銀行はこぞって通帳レスに舵を切っているが、デジタルデータでしか財産の記録がないという状態はどうにも不安でならない。
さてこの話、例えば千年に1回と述べたが、千年に1回なんて歴史ものじゃあるまいし(千年前は平安時代だ!)そこまで心配するのは行き過ぎで確率はほぼゼロではないかとあなたは感じるかも知れない。しかし冷静に考えてみよう。あなたの余命が50年として、あなたが生きている間に千年に1回の事象に出会う確率は50÷1000だから20分の1である。宝くじより遥かに高い確率であり運が良いと、じゃなくて運が悪いと当たるレベルなのだ。千年に1回の事象によって、もしあなたの人生を致命的にするならば備えておくべきと言いたい。とはいえ、太陽フレアでの大量データ破壊が千年に1回起こる根拠はなく、ここはわたしの勝手な論法ではある。
 
最後に
実は正直言って何となく、クラウドや通帳レス、その他ネットにまつわるシステムに不安を抱き続けている。その不安感を少しは具体的事象として示したかったのが本稿の趣旨。あなたの危険厨マインドに届いただろうか。結局のところ、何と言うかネット社会に身を任せたくないというのは、事故が怖くて自動車に乗りたくないというようなものかなと思いつつも。

 

2021年7月31日