山本文緒さんの「自転しながら公転する」を読んで思う

今週のお題「読書の秋」

 

信じられないことについ先日亡くなられてしまった、山本文緒さんの「自転しながら公転する」を読んだ際に勇気づけられたことをこの機会に認めておきたい。

筋の要諦は、本の帯にあるように ”東京で働いていた32歳の都は、親の看病のために実家に戻り、近所のモールで働き始めるが‥‥‥。恋愛、家族の世話、そのうえ仕事もがんばるなんて、そんなの無理!” と、もがき頑張る姿。そして2042年の未来の場面で、成人した娘の母としての都の述懐は「別にそんなに幸せになろうとしなくていいのよ。幸せにならなきゃって思い詰めると、ちょっとの不幸が許せなくなる。少しくらい不幸でいい。思い通りにならないものよ」と。そんな言葉とこの物語は、私のこの先にある何となくの不安をとても癒してくれた。

私の状況を書き出すに、一家を支えるためのお給料が低下、子供達の進路への心配、賃貸住宅に一生住めるのかそれとも今更家を買うのかそんな金はあるのか?、老後資金は足りるのか?、そして遠方に住む高齢の親のこと…。

でもこうして文字お越ししてみると、何か第三者的立場で自分の状況が見える気がして、小説の主人公の都の切実さに比べるとまだまだ私には余裕があるような気がしてくる。確かにワーストケースを想定すると身動き取れなくなりそうだけども、現実は意外と想像してなかった良いことも起こるわけで自分はまだまだ追い詰められているうちに入らないのでは、と心の声が響いた。

都の行動力のように私ももっと心に思うことをやってみて、そういうことが何らかこの先の可能性を広げてくれるように思えてくる。そんな小説でした。

山本文緒先生、ありがとうございました。

 

2021年10月24日